
ベーシックインカム(以下、BI)の大きな特徴は、収入に関係なく全員に一定額が支給されることにあります。
しかし、それだけでは「高所得者にも同じように給付されるのは不公平では?」という疑問が生まれるかもしれません。そこで重要となるのが、所得税の上乗せ(累進強化)です。BIと所得税の仕組みを組み合わせることで、実質的に高所得者ほど多くの税金を支払うことになり、結果的に格差の是正につながるのがポイントです。
1. なぜ高所得者にもBIを配るのか
BIは「全国民が無条件で受け取れる」という点にメリットがあります。この、対象を限定しないことで、
- 申請手続きの煩雑さやスティグマ(恥の意識)を避けられる
- “給付のはざま”に落ちる人をなくし、支援漏れを防ぐ
一方、高所得者にも給付されることへの不満もありますが、そこはご安心ください。所得税をコントロールすることで高所得者からはより多くの税を徴収する仕組みを組み込んでいるのです。
2. 「全員給付+上乗せ所得税」のメカニズム
- 全員に同額支給
- 低所得者が受け取れば生活が安定し、消費に回るため経済にも良い影響が期待できる。
- 高所得者も形式上は同額を受け取るが、後述の課税で差が生まれる。
- 所得税の累進度強化(上乗せ課税)
- 収入が多い人ほど高率の所得税が課され、BIで得た分以上に税を払うケースが出てくる。
- 低所得層はBIをほぼそのまま手元に残せるので、「BI給付 - 課税=プラス」を享受。
- 高所得層ほど「BI給付 - 高い課税=マイナスやほぼ相殺」に近づく。
この構造により、高所得者ほどBIの恩恵が薄れ(もしくはマイナスに転じ)、低所得者ほど給付効果が大きくなる。結果的に格差が縮小する方向に働くわけです。
3. 低所得者層へのプラス効果
- 可処分所得の底上げ
低所得者はもともとの税負担が小さい(ただし、所得割合から見る税負担は大きい)ため、BIで得た額がほぼそのまま「使えるお金」として残ります。家計に余裕が生まれることで貧困や生活苦を大幅に軽減できる。 - 就労意欲を損ねにくい
従来の福祉制度と違い、「少し稼ぐと給付が減る」という“給付の崖”がないため、働くほど収入が純増します。低所得層が安定して就労やスキルアップを目指すうえでの後押しになります。
4. 高所得者への税負担と格差是正
- 累進課税でBIを実質“返す”仕組み
高い収入を得ている人ほど、たとえば税率が大幅に上乗せされるため、BIの支給分を超える金額を税金として負担する。 - 社会的公正感の確保
「誰にでも支給される」ことで制度をシンプルにしつつ、税制によって所得再分配を行えば、「結局お金持ちがトクをするだけ」という誤解を回避しやすくなる。 - 経済全体への好循環
余剰資金が消費需要を下支えするので税収増にもつながりやすい。結果として貧困対策や社会保障強化への財源が生まれ、さらなる格差縮小へと波及する可能性がある。
5. 所得税上乗せによる長期的展望
BIは一度導入すると長期的に継続してこそ効果が高まります。そのため、財源や税制をどうデザインするかが非常に重要であり、BI論者は、
- 国債発行での短期的導入+累進課税やデータ課税などの組み合わせ
といった形で長期にわたる所得再分配を実現しつつ、AI時代における急激な格差拡大を和らげる施策としてBIを位置づけています。
まとめ
「高所得者にも同じ額を給付する」ことが一見不公平に感じられるベーシックインカム。
しかし、所得税の上乗せ(累進強化)を活用すれば、高所得者ほど「受給したBIをより多くの税で返す」構造が作られ、実質的には低所得者ほど恩恵が大きくなるしくみとなります。これは格差縮小につながる大きなポイントです。
全員給付のシンプルさと累進課税による再分配を組み合わせて、AI時代の雇用減や格差拡大に対処していくことが重要であり、最終的には社会の底辺を底上げしながら、不公平感を最小限に抑えることが可能になるのです。
