
ベーシックインカム(BI)は、全ての人に一定額を無条件で支給する制度として知られていますが、「既存の社会保障を完全に廃止する」というイメージを抱く方も多いかもしれません。
ところが、実際には「既存制度の一部をBIに吸収・置き換える」形で導入することも考えられます。そうすることで、社会保障制度がカバーしてきた領域をすべて失うわけではなく、従来のセーフティネットをある程度維持しながら、新たな仕組みに移行することが可能となります。
※これは私の独自論調となるため、一意見として捉えてください
生活保護との組み合わせ:勤労意欲の減退を防ぐ
例えば生活保護を月14万円受給している方の場合、7万円をベーシックインカムとして支給し、残りの7万円を従来の生活保護給付とする形が考えられます。このように「半分だけをBIに置き換える」ことで以下のようなメリットが生まれます。
- 勤労意欲の低減を防ぐ
従来は収入が増えると生活保護が減額されるため、働いても手元にあまり残らないケースがありました。一方、BI部分は生活保護の精度とは切り離されており、収入の有無に左右されません。そのため、生活保護を受給しながらでも収入を増やすことが可能となり、就労意欲が削がれにくくなります。 - 財政負担の平準化
公的負担が一気に増えすぎないよう、社会保障費の一部をBIに振り替えているため、大幅な財源不足を回避しやすくなります。
児童手当などとの組み合わせ:重複を防ぐ
同様に、児童手当を例にすると、月1万円受給している世帯の場合、BIの7万円のうち1万円分を「児童手当」と見なすことで、過度な重複給付を避けつつ児童養育世帯の生活を守ることができます。従来の支給体系とBIを併用しながら、一部を置き換えることで「手当の重複感」を抑えることが可能です。
- 財源の現実的な確保
すでに支給されている社会保障額の一部をBIに取り込み、必要財源を軽減します。 - 受給のシンプル化
BIという大枠があることで、手続きや審査が複雑にならず、スムーズに給付を受け取れる利点があります。
部分的置き換えがもたらすメリット
- 幅広いセーフティネットの維持
従来の社会保障制度をすべて廃止するわけではないため、医療や介護などの必須サービスはそのまま残しつつ、BIによって底上げする形をとれます。 - 制度の導入ハードルを下げる
一度に大規模な予算を確保するのではなく、既存の給付の一部を置き換えることで、導入時の財政的インパクトを抑えられます。 - 就労インセンティブを損ないにくい
BI部分は無条件給付なので、働いて得た収入がそのままプラスになりやすく、従来の福祉制度にありがちな「働くほど損」という事態を軽減できます。
まとめ
「ベーシックインカム=既存社会保障の統合(全廃)」という図式は誤解であり、生活保護や児童手当などの一部をBIに吸収して置き換えることで、より現実的かつ効果的に制度を運用できる可能性があります。
必要な人には従来の制度をしっかり残しながら、BI部分で底辺を底上げする仕組みを組み合わせれば、勤労意欲の確保と財政負担の平準化を同時に実現できるでしょう。こうしたアプローチは、社会保障の崩壊を招くことなく、新しいセーフティネットを築く有力な選択肢となり得るのです。
