【若者の政治離れ】若者は本当に政治から離れてしまったのか?

若者は政治から離れてしまったのか?

「若者の〇〇離れ」という言葉をよく目にするようになりました。

〇〇離れには明確な定義がありませんが、事例をググってみるとその姿が少し明確になってきます。

  • 結婚離れ
  • ギャンブル離れ
  • タバコ離れ
  • クルマ離れ
  • ビール離れ

25~29歳の男女の結婚率はこの30年で約20ポイント減。たばこの消費量で言えば約30ポイントも減少しています。

このように一昔前までは若者の「あこがれ」であったり「習慣」だったものが、近年急速にその件数であったり消費量が減少してきたものを指す言葉として使われていることがわかります。

では政治についてはどうでしょうか。若者の政治離れというと悪しき例として用いられることがしばしばあります。その答えを見つけるためにも衆議院議員選挙の投票率を参考にその推移を見てみましょう。

若者の政治離れは進んでいる

こちらの数字は平成2年の第39回衆議院選挙と平静29年の第48回衆議院選挙の投票率を並べたものです。

平成2年の57.76%から平成29年には33.85%とその減少率はポイント数でマイナス23.91pt、パーセンテージでは41.4%の減。

確かにこれでは「政治離れ」と言われるのも納得の数字です。4割以上の20代は投票権の放棄をしていることになります。

続いて比較的投票率の高い50代の投票率を併記した図をご覧ください。

上記の通り、50代も平成2年の84.85%から平成29年には63.32%とその減少率はポイント数でマイナス21.53pt、パーセンテージでは25.37%の減。

実は政治から離れているのは若者だけではなく、50代も同じことが言えるのがわかります。

確かに20代30代の投票率は大きく減少していますが、その上の世代も50代に限らず軒並み下落傾向にあり、「若者の政治離れ」の一言で片づけていては責任の所在を離れた若者に押し付ける形となり、いつまでたってもその原因の全貌を目にすることはできません。

単純比較では見えない投票率の推移

とはいえ上の図だけを見ると若者が徐々に政治から離れているようにも見えます。

しかし、これはあくまでも有権者が年を取らないことを前提条件としています。

20代の有権者も30年後には当然ながら50代となります。そうなるとグラフの読み方も異なってきます。

このように20代の若者も50代になる頃には投票理も57.76%から63.32%と5.56ポイント、パーセンテージで言えば9.63%も増加していることがわかります。

このグラフから考えると若者は政治から離れているのではなく、むしろ歳を重ねるごとに政治との距離を近づけていると考えられ、背景としては社会経験を重ねるごとに政治との距離が近づくことで自ずと関心が高まる、または身近なところに議員がいたり行政に関わる活動が増えてくることなどが想定できます。

他の年代、例えば40代の投票率を見ても、その数字は20年後の60代の投票率は大きな変動はありません。このことからも若者の政治離れが進んでいるのではなく、一度持った政治への関心は歳を重ねても大きく減少することはないが大きく上昇することもないことが推察できます。

では若者の政治離れという言葉がなぜ生まれたのでしょうか。それは単純に30年前の20代と今の20代の投票率の差分を示しているのが原因です。これには現代の議員・政治家と有権者との距離感に一因があります。

議員・政治家は声の届くところにいるから選挙が不要?

SNSの普及で議員の情報は身近になり、タップ一つで連絡を取ることができる昨今、政治は間違いなく身近なものになりました。

例えば、河野太郎衆議院議員はTwitterフォロワー数が230万人。れいわ新選組の山本太郎氏は43万フォロワーとSNSを使いこなす政治家にはたくさんの関心が集まっていることがわかります。

同時にそれだけ多くの関心が集まり、いつでもすぐにでも声が届けることができます。

選挙の常とう句に「皆さんの声を政治の場に届けます!」があります。要するに選挙とは、政治の場に有権者の声を届けてくれる代弁者を選ぶものであるということを示しています。しかし、今はSNSによって代弁者を立てずとも政治に声を届けられる環境が構築されているため、わざわざ時間を作って投票に行く必要性は著しく低下しています。

もちろん議員の仕事は代弁だけではありません。代弁は主に立案に類する行動に繋がりますが、議員の仕事には他にも多くの人が関心を示さないけどコアな施策について徹底して調査、軌道修正をするなど行政へのチェック機関としての重要な担いがあります。

しかし、選挙=代弁者の選択といった認識は決して間違いではありません。SNSは日々進化し、今ではテキストでの交流はもちろんながら、clubhouseのようにオンタイムで直接議論をすることも可能となりました。

この流れは今後ますます加速することを考えると、直接政治に声(意見)が届けられる情報化社会において、選挙の持つ重要性はこれからますます低下することでしょう。

ではそれが良くないかと言えばそんなことはありません。選挙を介さずとも声が届くのは間違いなく有権者にとっても議員にとってもメリットです。

冒頭投げかけた疑問である「若者の政治離れは悪なのか?」。この問題を多面的に見たとき、その答えは一概に悪ともいえないのではないでしょうか。


明ヶ戸亮太(あけど亮太):経営者×市議会議員
現在40歳:川越市議会議員(現在三期目)・広告会社代表取締役・ICTコンサルタント・FPのマルチタスク / JAPAN MENSA会員
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