【いじめ問題】いじめ行為の見えない代償

子どもたちがいじめを選ぶ背後の力

いじめという問題が我々の社会から一向になくならないのはなぜでしょうか?その背後には、子どもたちの心理的、社会的、そして認知的な要因が深く関わっていると言われています。※参考文献:福島大学教育学部論集「いじめ研究の現状と課題」

まず最初の要素として、子どもたちは自分の感情や衝動を適切にコントロールする方法を学ぶ機会が少なく、その行動が他人に与える影響を十分に理解する能力を持っていません。(では大人は十分に理解しているかと言われればそんなことはありませんが)

これらの習得機会の不足により、一部の子どもたちが一時的な快感や娯楽を求めることで他人を傷つける行為である「いじめ」を選択してしまう一因となります。

ではいじめ行為そのものをどこで子どもたちは覚えてくるのでしょうか。

子どもたちは自分たちが毎日見聞きするものから様々な情報を身に付けます。それが大人の間で行われる暴力行為や差別的な行動であった場合、子どもたちはそれを学び、学校で差別的な行為を実践することがあります。ネット社会において、「大人の行ういじめ行為」が子どもたちの目に晒されていますね。子どもたちの目にはどのように映っているのか、改めて大人である我々が考えなくてはいけません。

また、いじめ行為から得られる短期的なメリットも無視することはできません。一部の子どもたちは他人をいじめることで一時的な優越感や社会的地位の向上を感じるかもしれません。子どもたちは目先の損得で動きがちなものです。いじめ行為による長期的なデメリットに気付かず、いじめ行為に走るには短期的なメリットについても考えなくてはいけません。

これらの要因を理解することはいじめ問題を解決するための第一歩となります。次のセクションでは、いじめを行う側が直面する可能性のあるデメリットについて詳しく解説します。

いじめを行う側が直面する見えない代償

“いじめ”という行為は、加害者のデメリットにスポットが当たりがちですが、被害者だけでなく加害者自身にとっても様々なデメリットをもたらします。これらは、社会的、学業的、法的、そして個人的な視点から見た影響に分けることができますので一つづつ確認していきましょう。

社会的なデメリット

いじめの加害者はしばしば友人や同級生から孤立する可能性があります。当然です、いじめをする人と積極的にかかわりたい人なんてほとんどいませんよね。その為、人々はいじめ行為を非難し、加害者を避けることを選ぶ傾向があります。いじめ行為に関与することは他人との適切な対人関係を築く機会や能力を損ねる可能性があります。

学業的なデメリット

いじめを行う行為は加害者自身の学業成績にもマイナス影響を及ぼす可能性があります。いじめに関与する時間やエネルギーは、学習や課題、さらには他の有益な活動から取り上げられます。勉強や友人とのコミュニケーションに費やすことのできた時間をいじめ行為に費やす行為は大きな機会損失と言えます。

法的なデメリット

いじめが重大なものであった場合、法的な問題に発展する可能性もあります。これは学校の規則による罰だけでなく、場合によっては刑事責任にまでつながる可能性があります。いじめによる損害賠償は学校が支払いイメージがあるかもしれませんが、監督責任からいじめを行った子どもの保護者に数千万円の賠償金が求められるケースもあります。保護者には「うちの子がいじめられないように」という意識も大事ですが、「うちの子がいじめっ子にならないように」という新しい意識づけも必要です。

個人的なデメリット

加害者自身が経験する可能性のある個人的な影響も無視できません。いじめ行為は長期的にはストレスや罪悪感、そして自尊心の低下を引き起こす可能性があります。

これらのデメリットを理解することは、いじめ行為を選択することの真のコストを理解するための重要なステップとなります。次のセクションでは、いじめを行う側にこれらのデメリットを理解させるための方法を探ります。

いじめのループを断ち切るための道筋

いじめ行為の加害者にその行為のデメリットを理解させるためには、教育とエンパシー(※)の育成、行動に対する責任の強調、そして肯定的な行動のモデリングの4つの方法があります。

※エンパシーとは、相手の立場になってその人の考えや思いを想像し、理解する能力。

教育

学校や家庭で、行動が自分自身や他人に与える影響について教育を行うことが重要です。前項で記載したいじめによるデメリットなどは、家庭だけではなく学校の学びとしても取り入れることで効果にも期待ができます。教育現場であれば専門的な見地より、いじめの長期的な影響やそれが法的な問題に発展する可能性について説明することが望ましいでしょう。

エンパシーの育成

他人の視点を理解し、他人の感情を共有する能力を育てることが重要です。一言でいえばコミュ力です。これは、ロールプレイ、ディスカッション、または新しいテクノロジーを使用したシミュレーション(例えば、バーチャルリアリティ)によって実現できます。学校という多数で形成されるコミュニティだからこそ実施できる学びの実施です。

行動に対する責任の強調

いじめの行為が確認された場合、適切な結果や罰をもたらすことでいじめ行為の重大性を理解させることができます。小学生には少し早いと思われるかもしれませんが、法的な理解や家庭への責務、身近なところでは学校における罰則など制度上の理解に早すぎるということはありません。同時に、これらの学びは子どもだけではなく保護者にも理解が必要です。

肯定的な行動のモデリング

教師、親、(習い事などの)指導者、そして有名人などの役割モデルが、適切な行動と相互尊重の関係を示すことで、子どもたちはそれを模倣します。我々は大人として正しい背中を見せることができているか、自分の子どもだけではなく、その周りにいる子どもたちの事もイメージしながら振り返ることも必要です。

これらの手法は、いじめ行為のデメリットを理解し、最終的にはその行為を選択しないようにするための一部です。次のセクションでは、これらの情報を総括していきます。

まとめ

私たちがいじめという複雑な問題に取り組む際、一つの事実を忘れてはならないのは、これは個々の問題ではなく、私たち全体が関与する社会的な問題であるということです。その解決は、個々の子どもだけでなく、学校、親、地域社会全体が一丸となって取り組むことでのみ達成可能です。逆に言うならば、あなたのお子さんがいじめに遭ってしまったとき、自分の責任だと思い詰めることが無いようにしてください。

いじめ行為の加害者がその行為のデメリットを理解することは、この問題を解消するための重要な一歩です。むしろ私は被害者のデメリットよりも加害者のデメリットこそがいじめ問題を解消するためにできる事が残されている伸びしろだとも考えています。

それは彼らが他人を尊重する行動を選択するための道筋を示すだけでなく、彼ら自身が直面する可能性のある損失を防ぐ方法を示すものでもあります。

私たちは、いじめ行為の長期的な影響や法的な問題に発展する可能性について教育すること、他人の視点を理解し、他人の感情を共有する能力を育てること、そして肯定的な行動を模範とすることでいじめ問題の減少に寄与することができます。同時にいじめ問題は無くなることが無い、常に社会に存在しているというある種のネガティブな捉え方も視点を鋭く持つために必要な心構えです。

私はこれまで数多くのいじめ問題に取り組んできましたが、被害者の保護者の大半が「責任を一人で背負う」ことで、解決策が狭まってしまう状態に陥っています。

しかし、いじめを無くすためには個人の努力だけでは実現は困難であり、社会全体の理解と協力と努力が必要です。そしてその第一歩として、加害者であるいじめを行うものに起こりうるデメリットを理解し、共有する視点が欠かせません。

いじめの問題は社会で対応すべき課題で貼り、私たち全員が責任を持ち、共に取り組むことで、より理解し合い、尊重し合う社会を作ることが可能になります。


明ヶ戸亮太(あけど亮太)
1981年生まれ:元 川越市議会議員(三期)・広告会社代表取締役・ICTコンサルタント・ファイナンシャルプランナー / JAPAN MENSA会員 / フィジーカー(APF大会、アスリートモデル部門優勝)
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著書:マルチタスク思考

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